花粉症の原因となる植物はスギだけではありません。
ここでは、花粉の種類と、地域別での差について見ていきましょう。

花粉症の元になる、スギ・ヒノキ・イネ科・ブタクサ・ヨモギ・・・など

花粉症はスギやヒノキだけではありません。2003年までに日本で発見されている花粉症の花粉の種類は60種類以上あり1)、ブタクサ、カモガヤ、カナグラム、キク、コスモスなどのクサ花粉や、シラカンバ、クロマツ、アカマツ、イチョウ、リンゴ、アカシア、ウメ、ナシ、サクラなどの花粉症が確認されています。

それらのうち、日本人がもっとも有病率が高い花粉がスギ花粉です1)

スギ
スギ

 

ヒノキ
ヒノキ

 

ヨモギ
ヨモギ

スギ花粉の飛散時期は主に春です。

下記で詳しく説明していますが、地域によって多少飛散時期に違いはあるものの、反応が早い方で花粉が飛び始める1月上旬あたりから花粉症の症状が出てくる人はいるかもしれません。

その後、多くの地域で5~6月にはスギ花粉の飛散は終了します1)ので、長い人で1月~6月、短い人で2月後半~3月、が主にスギ花粉症のシーズンと言えるでしょう。

 

秋にも花粉症はある?

秋にも花粉症はあります。

代表的な植物ですと、ブタクサヨモギなどが秋に花粉が飛散する植物ですので、アレルギー反応の結果で、抗原がブタクサやヨモギなどにも反応があった方は、秋の花粉症と言えます。

地域によって多く飛ぶ花粉の種類が違う

スギ花粉の有症率が地域によって差があることは、「北海道・沖縄は花粉症の人が少ない?地域ごとの花粉症の差を考える」の記事で触れました。

スギ花粉と同様に他の植物の花粉も、植生している地域の違いや、木の花粉と草の花粉では飛散する範囲に差がある2)、地域によって花粉に注意する時期が微妙に違ってきます。

 

北海道地方の花粉飛散時期

<主な花粉症原因植物の花粉捕集期間(開花時期)

北海道の主な花粉症原因植物の花粉捕集期間(開花時期)
鼻アレルギー診療ガイドライン作成委員会:「鼻アレルギー診療ガイドライン-通年性鼻炎と花粉症-改訂第8版」P.23、株式会社ライフ・サイエンス,2015より一部抜粋・作図

北海道は全シーズン通して比較的花粉の量が少ない地域です。

他の地域では見られる秋のブタクサ属にいたっては、上記の表に観測値が表に記載されていません。

唯一、他の地域と比較するとシラカンバ(カバノキ科)の花粉が多い地域ではありますが、それでも日本の中では花粉があまり飛んでいない地域と言えるでしょう。

東北地方の花粉飛散時期

<主な花粉症原因植物の花粉捕集期間(開花時期)>東北の主な花粉症原因植物の花粉捕集期間(開花時期)
鼻アレルギー診療ガイドライン作成委員会:「鼻アレルギー診療ガイドライン-通年性鼻炎と花粉症-改訂第8版」P.23、株式会社ライフ・サイエンス,2015より一部抜粋・作図

東北地方では2月後半からスギ花粉の開花(飛散)ピークになる以外にも、

  • 4月にはヒノキ科花粉
  • 5月末~6月頭にはイネ科花粉
  • 9月頭にはキク科(ブタクサ属、ヨモギ属)花粉

がもっとも多い時期になります。

関東地方の花粉飛散時期

<主な花粉症原因植物の花粉捕集期間(開花時期)>

関東地方の主な花粉症原因植物の花粉捕集期間(開花時期)
鼻アレルギー診療ガイドライン作成委員会:「鼻アレルギー診療ガイドライン-通年性鼻炎と花粉症-改訂第8版」P.23、株式会社ライフ・サイエンス,2015より一部抜粋・作図

関東地方ではシラカンバ属の花粉は表にないものの、スギ花粉、イネ科花粉、ブタクサ属の花粉が他の地域に比べ長い期間にわたって飛んでいます。

そのため、複数の抗原に反応してしまう人は、通年花粉症の症状に悩まされることがあるかもしれません。

 

東海地方の花粉飛散時期

<主な花粉症原因植物の花粉捕集期間(開花時期)>

東海地方の主な花粉症原因植物の花粉捕集期間(開花時期)
アレルギー診療ガイドライン作成委員会:「鼻アレルギー診療ガイドライン-通年性鼻炎と花粉症-改訂第8版」P.23、株式会社ライフ・サイエンス,2015より一部抜粋・作図

 

東海地方では

  • 草本の花粉は少ない
  • 2月後半~4月半ばにかけてスギ、ヒノキ科の花粉飛散がピーク

となっています。

ただ、「北海道・沖縄は花粉症の人が少ない?地域ごとの花粉症の差を考える」にて、山梨県や静岡県は比較的有症率が高いとされていたため、少し違和感を覚えた人はいるかもしれません。

 

下記を見てみてください。

2012における、東京都千代田区と、山梨県甲府市、静岡県伊東市での花粉飛散観測値の比較です3)4)5)

  • 東京都千代田区 1256.7個/ cm2  1月1日から5月9日まで(花粉飛散終了記載なし)
  • 山梨県甲府市 1404.9個/ cm2  1月4日から5月10日まで(花粉飛散終了4/28)
  • 静岡県伊東市 3082個/ cm2    1月1日から6月30日まで(花粉飛散終了5/20)

花粉カレンダーで比較すると少ないように見えるのですが、実際の花粉飛散観測値を見てみると、都心と同等、もしくはそれ以上の花粉が飛んでいることになります。

こういったデータを見てみると、短い時期で集中して花粉が飛んでいるために、花粉症の方が多いのかもしれない、と考えることも出来そうですね。

 

ちょうど河津桜観光のシーズンと花粉飛散時期が重なりますので、花粉症の方はしっかり対策をして観光旅行にお出かけしてくださいね。

関西地方の花粉飛散時期

<主な花粉症原因植物の花粉捕集期間(開花時期)

関西地方の主な花粉症原因植物の花粉捕集期間(開花時期)
アレルギー診療ガイドライン作成委員会:「鼻アレルギー診療ガイドライン-通年性鼻炎と花粉症-改訂第8版」P.23、株式会社ライフ・サイエンス,2015より一部抜粋・作図

関西地方では

  • スギ花粉が2月後半から3月いっぱい
  • ヒノキ科花粉が4月にピーク
  • イネ科花粉が少ないながらも長期にわたって飛散している

という傾向のようです。

東北、関東ほどではないにしろ、イネ科の長期にわたった飛散がイネ科の花粉症の方にはツラいかもしれません。

 

また、大阪3保健所における2017年の観測データでは、スギよりヒノキの花粉飛散量が多く観測されていました6)7)8)9)

大阪3保健所 観測期間中における花粉総飛散量合計
大阪府茨木・藤井寺・泉佐野保健所生活衛生室検査課:「2016年空中花粉飛散量測定のまとめ」表1、表2および、「2017年 藤井寺保健所 花粉情報まとめ」「2017年 茨木保健所 花粉飛散状況のまとめ」「2017年花粉情報」より抜粋・作図

ヒノキの植林が西日本に偏っている10)ためと考えられます。

スギよりもヒノキの花粉症に苦しまれている方は、関西方面へは春以外のシーズンに観光に行くとよさそうです。

九州地方の花粉飛散時期

<主な花粉症原因植物の花粉捕集期間(開花時期)

九州地方の主な花粉症原因植物の花粉捕集期間(開花時期)
アレルギー診療ガイドライン作成委員会:「鼻アレルギー診療ガイドライン-通年性鼻炎と花粉症-改訂第8版」P.23、株式会社ライフ・サイエンス,2015より一部抜粋・作図

九州の花粉飛散状況は、

  • スギ花粉のピークが2月後半から3月前半
  • ヒノキ科花粉のピークは3月~4月前半
  • イネ科とともにスギ花粉も少ないながらも長期にわたって飛散している

という傾向のようです。

大まかには、近畿地方と近い傾向ではありますが、スギ花粉の長期飛散は気になりますね。

 

また、花粉ではないですが、九州地方は黄砂の影響が大きい地域でもあります11)

花粉の飛散する時期と、黄砂が飛ぶ時期が重なる12)ので、花粉症の方にとってはなかなかツラい土地なのかもしれませんね。

職業と花粉症~ちょっと一息:花粉症トリビア~

現在発見されているアレルゲンとなっている花粉の種類は60種類以上あると、上記で触れましたが、その中には職業と密接な花粉症がいくつかあります。
果物の花粉症

  • リンゴ栽培者の方のリンゴ花粉症13)
  • ナシ栽培者の方のナシ花粉症14)
  • ブドウ栽培者の方のブドウ花粉症15)
  • 生花栽培者の方の花粉症16)

などがあります。

職業に付随する花粉症の発症は、抗原を避ける、ということがどうしても難しいので、治療については通常よりも難しい面があると言えるでしょう。

 

中でも、少し古い症例にはなりますが、面白い(というと失礼かもしれませんが…)報告で、ブタクサ花粉研究者のブタクサ花粉症例17)、というものもあります。

 

なかなか症例としては上がりにくいものかもしれませんが、花粉研究者(医学研究者、植物学研究者など含めて)の中での花粉症調査があったら興味深いデータがとれるのかもしれませんね。

<参考文献>

  1. 環境省.花粉症環境保健マニュアル.2014年1月改訂版,2014,p.7,13,http://www.env.go.jp/chemi/anzen/kafun/manual/full.pdf,(参照 2017-10-25).
  2. 藤崎洋子ほか.花粉症の研究 : III.花粉の飛散型について.アレルギー.1975,Vol. 24 ,No. 8,P.613-628, https://www.jstage.jst.go.jp/article/arerugi/24/8/24_KJ00001615683/_pdf, (参照 2017-10-31).
  3. 東京都健康安全研究センター.“平成22年スギ花粉の観測データ”.http://www.tokyo-eiken.go.jp/kj_kankyo/kafun/data_spring/h22/sugi/, (参照 2017-10-31).
  4. 山梨県衛生環境研究所.2012年春季甲府地区における花粉飛散状況報告(資料).http://www.pref.yamanashi.jp/eikanken/documents/201j.pdf, (参照 2017-10-31).
  5. 藤井まゆみほか.静岡県伊東市における樹木の花粉飛散状況.アレルギー.2013,Vol. 62 ,No. 11,P.1522-1533,https://www.jstage.jst.go.jp/article/arerugi/62/11/62_KJ00008987949/_pdf, (参照 2017-10-31).
  6. 大阪府茨木・藤井寺・泉佐野保健所 生活衛生室検査課 大阪府健康医療部 健康医療総務課.2016年 空中花粉飛散量測定のまとめ.http://www.pref.osaka.lg.jp/attach/3712/00148455/2016kafun.pdf, (参照 2017-10-31).
  7. 健康医療部 茨木保健所 検査課.“2017年 茨木保健所 花粉飛散状況のまとめ”.大阪府ホームページ.http://www.pref.osaka.lg.jp/ibarakihoken/kensaka/kafuniba.html, (参照 2017-10-31).
  8. 健康医療部 藤井寺保健所 検査課.“2017年 藤井寺保健所 花粉飛散状況のまとめ”.大阪府ホームページ.http://www.pref.osaka.lg.jp/fujiiderahoken/n-kensa/kahun.html, (参照 2017-10-31).
  9. 健康医療部 泉佐野保健所 検査課.“2017年花粉情報”.大阪府ホームページ.http://www.pref.osaka.lg.jp/izumisanohoken/kensaka/kahun.html, (参照 2017-10-31).
  10. 林野庁.“道府県別 スギ・ヒノキ人工林面スギ・ヒノキ林に関するデータ”.林野庁ホームページ.http://www.rinya.maff.go.jp/j/sin_riyou/kafun/data.html,(参照 2017-10-31).
  11. 環境省.平成27年度黄砂飛来状況調査報告書.環境省ホームページ.https://www.env.go.jp/air/dss/torikumi/chosa/rep7/01.pdf, (参照 2017-10-31).
  12. 東朋美ほか.“黄砂とアレルギー疾患”.エアロゾル研究.2014,Vol. 29,No. S1 特別号,P. 214,https://www.jstage.jst.go.jp/article/jar/29/S1/29_s212/_pdf, (参照 2017-10-31).
  13. 沢田幸正.職業性リンゴ花粉症.産業医学.1978,Vol. 20 ,No. 6 ,2P,https://www.jstage.jst.go.jp/article/joh1959/20/6/20_6_382/_pdf, (参照 2017-10-31).
  14. 月岡一治.ナシ花粉症の2症例.アレルギー.1984,Vol. 33 (1984) No. 10 ,6P,https://www.jstage.jst.go.jp/article/arerugi/33/10/33_KJ00001620667/_pdf, (参照 2017-10-31).
  15. 月岡一治.ブドウ栽培者にみられたブドウ花粉症の1例.アレルギー.1984,Vol. 33 (1984) No. 4 ,4P,https://www.jstage.jst.go.jp/article/arerugi/33/4/33_KJ00001620097/_pdf, (参照 2017-10-31).
  16. 栃木隆男.鑑賞用切花スターチス栽培に伴う職業性アレルギー性鼻炎の1例.アレルギー.1988,Vol. 37, No. 8,1P,https://www.jstage.jst.go.jp/article/arerugi/37/8/37_KJ00001622830/_pdf, (参照 2017-10-31).
  17. 中村晋.ブタクサ花粉研究者にみられた職業性ブタクサ花粉症例.アレルギー.1975,Vol. 24,No. 8 ,p. 599-603,636-63,https://www.jstage.jst.go.jp/article/arerugi/24/8/24_KJ00001615681/_pdf, (参照 2017-10-31).